桜とくちづけ
闇迫る黄昏の 一陣の風に吹かれ舞い散る桜の花びらに
誘われるまま口付けを交わそう。
白い肌に色づくそれにやさしくけれど逃さぬように。
なりませぬと声を上げることもできずその口付けはなされた。
ああ我が主はなぜもこうなのか。
もしもの事があればどうなさるのかと半ば本気で叱っても
でも大丈夫だったじゃねーかと闇の中で笑われる。
銀の髪をたなびかせ、
桜の下で佇まれる姿は逞しく育たれた男性でありながらも妖美さを帯びて。
こうも我が心を惑わせるのだ。
この身はすべて主のもの、その御身を害するなどあるわけもなく、
どころか髪の先から爪の先まで喜びに打ち震える。
お慕いするお方の精をどうぞ我が身にと心の底から望むは雪女の性。
「氷麗」
「あなたの望みのままに」
それが我が望みでもあると、微笑めば
破顔一笑。
桜も霞むその様にしばし見惚れ後は闇の中。
さくらさくら やよいのそらは
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